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明朝、ビーストアークの城門をくぐる一団がある。
この時期何処の国でも確認できる現象。移民団だ。

申請を受理された彼等はすぐに幾つかの塊に別れ、それぞれの地を目指す。
彼等の表情は比較的明るい。これからの生活に心躍らせ、期待に顔を紅潮させる者から、祖国への帰郷に安堵の笑みを浮かべる者まで様々だ。

そんな集団の一つに、寒い中をさらに北へと向かうものがあった。
彼等の足取りも他と同様重くはないのだが、だんだんと厚みを増す足元の雪はそれを軽くする事も許さなかった。

靴底が雪を踏みしめる音意外は聞こえない、そんな真っ白な時間。

どれくらい経ったろうか。厚く着込み、マントに身を包んだ一団が、一人のワーウルフと擦れ違った。
互いの国へと向かう移民が、それぞれ道中で擦れ違うのは慣例となっていたが、そのワーウルフは国の移動がよっぽど嬉しかったのだろう、一人先行しているようだ。
金色の目を輝かせ、風のように駆けていく。

文字通り脇目も振らず駆け抜けたワーウルフに、移民の中の一人が反応を示した。
ふと足を止めた彼は、振り向き、少しだけ顔を上げる。


・・・ほんの少しの間。
彼は去っていくワーウルフの背中と、その上で踊る銀色の髪を口元を緩めて見送った。

本当に、僅かな時間だった。

浮かぶ間もなく笑みは掻き消え、彼は不機嫌そうに踵を返した。


結局の所、一瞬の交錯は何も生まず。



その日の内、あれからそう長くない時を経て
帝国の傭兵部隊に、蛮族が一人編入された。


あの時綻んだ口元に乗ったのは微笑だったのか、哄笑だったのか、それとも嘲笑だったのか。そしてそれは誰に向けられたものか。

今となっては、もう。
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