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全身を内から焼かれる。
血管という血管を炎が走り、呼吸をする度に燃え上がる感覚。

疼くとか痛むとかならまだ。
まだ慣れているのに。


のたうち回る力も尽きてうずくまる。
目を閉じても眠りは訪れてくれない。


這って進んで水を飲んで、鏡を見たら叩き割りたくなった。
エクシュリが何故か出かけていたのが唯一の救いか。


傷を診てくれ。

そう言って半ば強制的に叩き起こした男は、やはり不機嫌そうな顔をしていた。
だがこちらもそれに構っている程余裕が無い。

勝手に上がりこんで上着と包帯を剥ぎ、傷口を晒す。

獣の爪にやられた所。
特に首元が酷い。

雑菌と言う観点では最悪な武器による傷。
その上に砂と腐汁が混ざり込んだわけだ。ろくな状態とは言えまい。
だが、話はそれどころでは無かった。

空気に触れた傷口がぐずぐずと崩れる。
傷口を洗い、応急的な処置を施し、眠ろうとはしたが疼きが止まらない。むしろ酷くなってさえいる。
傷口の周囲までもが変色を始めたのを見て頭を抱え、結局ここにやってきたわけだが。


「処置はしてやるが覚悟は決めろ」

その言葉に二つ返事で返す。
覚悟は決めてきた。
このままほかっておいて手遅れになるよりマシだ。

ルト=ラ=パティラ
炎と共に在る魔族。
そしてこの男の火加減と容赦の無さには信頼を置いて良いと思えた。

渡された手ぬぐいで口をふさぎ、噛む。
舌を噛まないように。無様な悲鳴をここで殺せるように。


話に寄ればこの腐食も呪詛に因るところがあり、それは既に全身を巡っても居ると。
そしてそれらを焼き尽くすという事らしい。

ルトが口でナイフを咥えるようにする。
…何か喋ろうとして失敗したようだ。口から血が一筋零れた。

大丈夫なのか、と思う前にこれから我が身に起こる事態が想像でき、天井を仰いだ。

にちゃり

傷口に指が触れる。痛みだか何だか分からない感じに鳥肌が立った。

ぐちゃぐちゃと、とても自分の身体とは思えない音と共に激痛が走る。
ルトが遠慮も何も無く傷口を開いていくのが分かった。
空気に触れる部分が増えるたびに悲鳴をあげたくなる。

それらを歯を噛み締めて抑える。
まだ。

本番はここからだ。

ルトの口が傷口に触れる。
その一瞬後。

そそがれた血が傷口を焼いた。

この魔族の操る炎は血の内すらも巡る。
煮え滾った、というよりも炎そのものに近いそれが腐った肉を焦がしていく。

がくがくと全身を強張らせてそれに耐える。
悲鳴も苦鳴も噛み殺し、ただそれが過ぎ去るのを待つ。
自分の肉の焼ける煙などそうそう拝めるものではなかったろう。


手ぬぐいごしに荒い息をついて身体を落ち着かせる。

「覚悟が決まったら、大きく息を吸え。貴様の体内で我の魔力が燃え上がる。
我が出来るのは此処までだ。」

…まだ続きが。
既に血と共に全身に巡った分がある。

血流は「私」を巡り、血管は「私」を繋ぐ。
その道に力を通すという彼の方法は理にかなっていると思えた。
しかし、それはつまり今の痛みを全身に…

もうどうにでもなれ。

覚悟が揺らぎそうになるのに先手を打ち、深く深く息を吸い込んだ。
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